製品技術資料:自動車外装用高性能改性ポリプロピレン (PP+EPDM-T25)
1. 製品概要
PP+EPDM-T25 は、自動車産業向けに開発された、鉱物充填・耐衝撃改性ポリプロピレン複合材料です。ポリプロピレン (PP) をベース樹脂とし、エチレン・プロピレンゴム (EPDM) による強靭化と、25% の超微細タルク (Talc) による補強を施しています。
本材料は、高い剛性、優れた耐衝撃性、および卓越した寸法安定性を高い次元でバランスさせており、大型の外装部品や「薄肉設計(Thin-wall)」による軽量化を実現するための最適解です。
2. 主な特長と技術的メリット
優れた機械的バランス
高剛性: 25% のタルク充填により、標準的な T20 材料と比較して高い曲げ弾性率を実現し、優れた構造支持力を提供します。
低温耐衝撃性: EPDM ゴムの配合により、-30°C の極低温下でも高いエネルギー吸収性を維持。衝突時に「脆性破壊」ではなく「延性破壊」を示すため、安全性が向上します。
超低収縮率: タルクの配合が PP 特有の成形収縮を効果的に抑制。大型で複雑な形状の部品でも、冷却後の反りや変形を最小限に抑えます。
表面品質と環境耐久性
プレミアムな外観: 溶融流動性(フロー)を最適化することで、大型薄肉部品に発生しやすい「タイガーストライプ(流痕)」やヒケを大幅に低減します。
優れた耐候性: 高性能な UV 安定剤を配合。長期間の直射日光にさらされても、チョーキング、退色、脆化が起こりにくい設計です。
低 VOC 散発: 自動車メーカーが定める厳しい揮発性有機化合物(VOC)排出基準に適合しており、環境と健康に配慮した設計です。
3. T25 グレードの T20 に対する優位性
従来の T20 (20% 充填) 規格と比較して、T25 (25% 充填) にアップグレードすることで以下のメリットが得られます。
剛性の向上と薄肉化: 曲げ弾性率が通常 300〜500 MPa 向上します。これにより、同じ構造強度を維持しながら壁厚を薄くする「薄肉設計」が可能になり、材料密度の増加を相殺して部品全体の軽量化に貢献します。
寸法精度の向上: 成形収縮率がさらに低下(例:0.9% から 0.7% 前後へ)するため、鈑金部品との隙間(ギャップ&フラッシュ)をより精密に管理でき、車両の外観品質と高級感を高めます。
耐熱性の向上: 荷重たわみ温度 (HDT) が約 5°C〜8°C 向上。夏季の高温環境下やエンジンルーム付近の熱負荷に対しても、部品の軟化や変形を防ぎます。
NVH 特性の改善: 鉱物充填量の増加により内部減衰能が向上し、走行中の振動や異音(BSR - Buzz, Squeak, Rattle)の発生を効果的に抑制します。
4. 主な用途
フロント / リアバンパー本体: 高い剛性で空力形状を維持しつつ、衝突時の安全基準をクリアする強靭さを提供します。
サイドシル / サイドモール: 飛び石などの衝撃に強く、過酷な環境下でも寸法精度を維持します。
ホイールアーチ / フェンダー: 複雑な曲面形状でも高い装飾性と精密なフィッティングを実現します。
ラジエーターグリル / スポイラー: 走行風の圧力やエンジン熱による軟化変形を防ぎます。
5. 技術データ比較 (代表値)
| 試験項目 | 試験方法 | 単位 | T25 規格 | T20 規格 (参考) |
| 密度 | ISO 1183 | g/cm³ | 1.09 - 1.12 | 1.04 - 1.06 |
| メルトフローレート (MFR) | ISO 1133 | g/10min | 15 - 25 | 15 - 20 |
| 曲げ弾性率 | ISO 178 | MPa | 2,000 - 2,400 | 1,600 - 1,800 |
| 引張強度 | ISO 527 | MPa | 22 - 28 | 20 - 25 |
| シャルピーノッチ付衝撃 (23°C) | ISO 179 | kJ/m² | 35 - 50 | 40 - 55 |
| 成形収縮率 | 弊社規定 | % | 0.6 - 0.8 | 0.8 - 1.0 |
| 荷重たわみ温度 (0.45 MPa) | ISO 75 | °C | 115 - 120 | 105 - 110 |
6. 成形加工条件の目安
予備乾燥: 80〜90℃ で 2 時間を推奨。タルク表面の微量な水分を除去し、外観不良を防ぎます。
樹脂温度: 200℃〜240℃。
金型温度: 40℃〜70℃。高めの金型温度設定は、薄肉部品の表面光沢向上とウェルドラインの改善に有効です。
射出速度: 大型投影面積の部品を充填するため、中〜高速での射出を推奨します。