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乾燥工程を極める:PC/ABSの乾燥温度と成形技術の徹底解説

著者: 公開日:2026-01-09 13:58 閲覧数:11

以下は、PC/ABS樹脂の乾燥工程に関する技術ガイドの日本語訳です。日本の射出成形現場で使われる専門用語(銀条、水条、デシカント乾燥機など)を使用して翻訳しています。


乾燥工程を極める:PC/ABSの乾燥温度と成形技術の徹底解説

エンジニアリングプラスチックの加工分野において、PC/ABS(ポリカーボネート/ABS樹脂アロイ)は、PCの耐熱性・高強度とABSの流動性を兼ね備えているため、自動車内装、家電筐体、OA機器などに広く採用されています。しかし、現場の技術者が最も頭を悩ませる問題の一つが、**「長時間乾燥させたはずなのに、なぜ成形品に銀条(シルバー)が発生するのか?」**という点です。

この問題を解決する鍵は、PC/ABSの乾燥温度と特性を正確に把握することにあります。本稿では、技術パラメータ、乾燥メカニズム、実務的な操作スキルの3つの観点から、PC/ABSの乾燥プロセスを深く掘り下げます。

1. 核心的回答:PC/ABSの最適な乾燥温度は?

通常、標準的なPC/ABSアロイの推奨乾燥温度は 90°C〜110°C、乾燥時間は 3〜4時間 です。

ただし、実際の生産現場ではこの数値は固定されたものではありません。グレードや環境湿度に応じて微調整が必要です。

  • 一般グレード PC/ABS: 推奨設定 90°C - 100°C

  • 高耐熱グレード PC/ABS: PC含有量が高い、または耐熱改性剤が含まれるため、105°C - 110°C まで引き上げ可能です。

  • 難燃グレード(FR) PC/ABS: 85°C - 95°C に抑えることを推奨します。難燃剤は高温で長時間加熱すると分解しやすく、材料の黄変の原因となります。

2. なぜ乾燥工程を厳格に管理すべきなのか?

PC/ABSは吸湿性材料です。短時間空気中にさらすだけでも、分子鎖中のエステル基が水分を吸収します。

① 機械的特性への影響

乾燥が不十分な場合、射出成形機の高温シリンダー内で加水分解が起こります。加水分解はPCの分子鎖を切断し、分子量を低下させます。その結果、製品の衝撃強度が劇的に低下し、本来壊れにくいはずの筐体がガラスのように脆くなってしまいます。

② 外観品質への影響

高温下でガス化した水分が溶融樹脂と共に金型内に入ると、成形品表面に放射状の白い筋が発生します。これが俗に言う「銀条(シルバー)」や「水花(スプレーマーク)」です。高光沢仕上げや塗装が必要な製品にとって、これらの欠陥は致命的です。

3. 乾燥効果を左右する3つの重要な変数

設定温度を合わせるだけでは不十分です。乾燥は、温度、時間、除湿空気、そして露点の組み合わせによるシステム工程です。

① 露点(Dew Point)の重要性

一般的な熱風乾燥機は、周囲の空気を加熱して水分を飛ばします。しかし、梅雨時期や高湿度の環境下では、空気自体に水分が含まれているため効率が極端に低下します。そのため、**除湿乾燥機(デシカント乾燥機)**の使用を推奨します。除湿乾燥機は空気の露点を -40°C以下 に下げることができ、スポンジが水を吸うようにペレット内部の水分を迅速に取り除きます。

② 乾燥時間のバランス

乾燥時間が不足(2時間未満)すると、ペレット芯部の水分が排出されません。逆に、**乾燥時間が長すぎる(8〜10時間以上)**と、材料の熱劣化や酸化による変色を招きます。

現場のヒント: 4時間以上のライン停止が予想される場合は、過乾燥による物性変化を防ぐため、乾燥機の設定温度を50°C程度まで下げるのが定石です。

③ 材料の層厚と風量

ホッパー内の材料が厚すぎると、底部の熱風が上部まで均一に通りません。ファンが正常に作動しているか、フィルターが粉塵で詰まっていないかを確認することが、正確な温度管理の前提条件です。

4. 現場での判定方法:材料はしっかり「乾いている」か?

精密な水分測定器がない場合、熟練の技術者は以下の方法で簡易的に判断します。

  • パージテスト(空射出): 乾燥後の材料をノズルから空射出します。射出された樹脂が滑らかで透明、かつ気泡やパチパチという音(スチーム爆発音)がなければ、乾燥状態は良好です。白煙や微細な気泡があれば乾燥不足です。

  • 粒子の状態観察: 冷却後のペレットを数粒確認します。適切に乾燥されたPC/ABSは非常に硬い質感を持ちます。もし柔らかく感じたり、粘り気がある場合は、温度が高すぎたか乾燥が不十分です。

5. 加工現場での「見かけ上の温度」問題の解決

設定パネルが100°Cを示していても、ホッパー内部の材料がその温度に達していないことがあります。これを「虚偽温度」問題と呼びます。

  • センサー位置: 熱電対(センサー)が吸気口付近にあるか確認してください。センサーの故障や位置ずれがあると、表示数値は意味をなしません。

  • フィルター清掃: フィルターが粉塵で詰まると風量が減少します。熱風の温度が足りていても、熱交換効率が大幅に低下します。

  • 材料の色による違い: 黒色の材料は白色や淡色系よりも熱を吸収しやすい特性があります。黒色のPC/ABSを大量に乾燥させる際は、局所的なオーバーヒートを防ぐため、淡色系より5°C程度低めに設定するのがコツです。

6. まとめとSOP(標準作業手順)参考表

生産管理の効率化のため、以下のデータを標準作業手順の参考にしてください。

PC/ABS タイプ

推奨乾燥温度 (°C)

推奨時間 (h)

許容含水率 (%)

標準グレード

90 - 100

3 - 4

< 0.02

耐熱グレード

100 - 110

3 - 4

< 0.02

難燃グレード

85 - 95

4 - 6

< 0.02

メッキグレード

90 - 100

4 - 5

< 0.01

特に、メッキグレードのPC/ABSは水分要求が極めて厳しく(0.01%以下)、水分過多はメッキ層の密着不良(ふくれや剥離)に直結します。高性能なハニカム除湿乾燥機の使用を強くお勧めします。

運用の鉄則: 「少量多頻度、使う分だけ乾燥させる」原則を守りましょう。一度に大量に乾燥させすぎると、材料がホッパー内で長時間滞留し、二次吸湿(戻り)の原因となります。

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